No.151
後輩のはなし
あの夏のことを、ふと思い出したので、書いておく。
お茶までいただきながら、何度かお邪魔するうちに、鳥羽さんが奥様と若い頃に一度だけ訪れた、
あの一枚の写真の場所を、今もはっきり思い出せずにおられる、という話を、改めて伺った。
ご本人もそれを諦めたわけではないらしい。
「死ぬまでに、もう一度、自分の足であの場所に立ちたいんですよ」
鳥羽さんは、いつもと同じ、柔らかい声でそうおっしゃった。
私はそのとき、ある後輩の顔を思い浮かべた。
まだ駆け出しだが、地理や写真の細部から場所を読むのが不気味なほど上手い男がいる。
自身で合点が合わなければ、確実な正解に辿り着くまで抱え込んでしまうところがあるが…
「鳥羽さん、ひとつ私の知り合いを、ご紹介してもいいですか」
私は、自分のことのように、その男を勝手に売り込んだ。
鳥羽さんは、嬉しそうに頷いてくださった。
その後、後輩は鳥羽さんと面会し、依頼を引き受けた。
私のところには、その夜、いつにない早足で報告に来た。
写真の細かい話を、矢継ぎ早に、興奮した顔で話していた。
あいつのことだ、空回りしなければいいが。