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BAR R²

No.398

便りがあれば

今朝、店のポストにまた絵葉書が届いておりました。

表面は、見たことのない港町の風景。
消印は、九州の北の小さな町のものでした。

裏には、藤巻さんの几帳面な筆跡で、いつものように短く、こう綴られておりました。

「今朝の港、霧。
  港の食堂で、鯖の味噌煮を食べた。塩気が強い。
  市場のおばさんから、よもぎ餅を一つ譲り受ける。
  夕方、近くの神社まで歩く。
  お前、無理するなよ。」

藤巻さんがどんなご様子で、何をしに、どれくらい滞在されているのか。
体調のことも、ご気分のことも、これからどこへ向かわれるのかも。
一言も、書かれてはおりません。

ただ、最後の一行だけは、いつも私に向けられたものでございます。
季節によって少しずつ言葉は変わるのですが、文面の隅に、
私を気遣う言葉を、藤巻さんは必ず添えてくださっております。

引き出しを開けて、これまで届いた絵葉書を並べてみました。
北の山あいの温泉地、瀬戸内の小さな島、関東の盆地の町、東北の海辺。

並べてみても、書かれているのは、その土地の景色、食べたもの、出会った人。
藤巻さんご自身のことは、本当に、一文字もございません。

思い返せば、藤巻さんがあのノートを綴っておられた頃から、まったく変わっておりません。
紺屋の白袴とはよく申したものでございます。

ただ、こうして筆跡が定期的に届いている限り、藤巻さんはどこかでお元気にされているのだろうと思います。